DAIWA(グローブライド株式会社)にみるオンラインVR展示会の可能性

はじめに

こんにちは、仕事中も釣りのことばかり考えている中間管理職T.Yです。
この原稿を執筆している2021年1月25日現在、弊社の本社所在地である兵庫県も含め、全国11都道府県にコロナ禍による緊急事態宣言が発令されています。

当然ながら不要不急にあたる釣行も自粛となり、週末は家で暇をもてあそぶばかり。釣りに行けない鬱憤を、釣具のメンテナンスや新製品の情報収集で晴らすわけです。う~ん、ストレス!!

釣り業界ではこの時期、「釣りフェスティバル(旧称フィッシングショー)」なる展示会が、関東ではパシフィコ横浜、関西ではインテックス大阪で例年行われておりました。

毎年盛況で会期の3日間で5万人を軽く超える来場者があり、筆者も前職では仕事として、現職ではイチファンとして欠かさず行っていたのですが…。過去には釣りの協会名誉会長として菅総理大臣も来場していたこの由緒正しい展示会もコロナ禍でオンライン開催に変更に。

釣りキチの皆さんであればご理解いただけると思うのですが、リールや竿といった高級品(モノによっては10万円を超える代物も)、しかも操作感やフィーリングを大事にしなければならない商品をオンラインでどうやって伝えるのか…。

実際に2021年1月22日~1月24日(Web公開は+一ヶ月ほど)に行われた「釣りフェスティバル2021」に出展されていた「DAIWA(グローブライド株式会社)」がどのような手法をとっていたのか紹介していきましょう。

展示ブースを丸ごとVR(ヴァーチャルリアリティ)で再現

筆者は10年ほど前に中国で不動産向けのVR商材を目にしていましたが、当時はこれを日本の市場に持ち込むことが難しく泣く泣く導入を見送った経験があります。「わざわざヴァーチャルで見なくても実物を見るよ」というのが大体の業界での共通認識でした。

そのVRがここ数年急激に注目度を上げてきたものの、それでも「実際の来店に繋げるためのフック」的扱い、つまり客寄せパンダ的立ち位置でした。それがコロナ禍において役割が変化してきており「現場(現物)を見なくても購買に繋げられる」ツールとしての地位を確立し始めています。

さてDAIWAのブース。

釣具の展示会の企業ブースですので

https://www.tsurifest.com/exhibitors/5 から https://www.daiwa.com/jp/ へ

会期終了後は直接

https://www.daiwa.com/jp/ から https://www.daiwa-online.com/products/vtour/tour.html DAIWA ISLAND へ

するとPC画面上に見事なブースが!!

実際に釣りフェスティバルに行かれたことがある方なら分かると思いますが、2020年のDAIWAブースそっくりの作りです。

ちなみにVR画面はこちら。

VRゴーグルをお持ちであればより没入感を楽しめるようになっています。

 

もちろんスマホからも閲覧可能。

通路のある矢印をクリックもしくはVRであれば視点を合わせるとその方向へ進める仕組み。

試しに左の矢印方向に進むと…

バスフィッシングのコーナーに移動することができました。

そのまま右に方向転換すると

なにやら人だかりが。

なんと、バスフィッシングに来ているかのような池が現れました。

どうやらここがバスフィッシング専用の紹介エリアのようです。

 

このように自在に動き回れるブースを丸ごと再現しているうえに、特別な説明がなくても直感的に操作することができます。また、実際の展示会では難しい「池」を出現させることができるのもオンライン(VR)展示会の強みと言えそうです。

 

実際の商品紹介はどうしてるの!?

それでは展示会のキモともいえる商品展示はどういった手法で行われていたのでしょうか。

筆者が大好きな「ジギング(疑似餌を使った海の釣り)」を例に商品を見に行ってみましょう。

今回の展示会で大きな注目を浴びたのがDAIWAのジギング用リールのフラッグシップモデル「ソルティガ」のカウンター付きモデル。現時点ではリリース情報のみで実物はどこの釣具屋さんにも置いていません。本来はそんな新商品をイチ早く触ることができるのが展示会の強み。筆者も触りたくて仕方がありません。

 

早速ヴァーチャルブースに入って「OFFSHORE」コーナーへ。

ちなみに「MAP」を使ってダイレクトにコーナーへ行くこともできます。リアルであれば人混みをかき分けかき分けやっと目的のコーナーにたどりついたものですが…これはストレスもなく便利な機能ですね。

「MAP」から入ると

なんと船のミヨシ(船の船首部分。映画タイタニックで抱き合っていた場所)からの風景を眺めることができます。実際にジギングをされている方だとお分かりと思いますが、コレ、かなりリアルです。

真ん中の「PRODUCTS」から入ると

新製品がズラリ。

お目当ては左上の「SALTIGA IC」です。クリックしてみると

おお、カッコイイ!!

通常のSALTIGAシリーズはシルバーメインのボディでしたが、「IC」になるとブラックボディになるんですね。

な~んて視覚情報もリアルと変わらず伝わってきます。

 

「3D REAL VIEW」はまだ未公開でしたが、「360°VIEW」を開いてみると

右下の矢印でグリグリと商品を回すことができます。

「+」マークをクリックするとその部分の機能的な詳細がポップアップされる仕組み。

フムフム、最新SALTIGAの細部はこうなってるんですねぇ。いや、商品の特徴が良く分かってインフォメーション的にはかなり洗練された商品紹介システムと言えます。

 

ただただ…。

惜しむらくは、釣り人が展示会に求める「操作感」「質感」「サイズ感」が体感できないこと。

いや、サイズ感はスペック表で数値的には分かるんですが…なんというかこう、手のひらに収まった時のサイズ感というものが伝わらない…。

こればっかりはどうしてもリアルには敵わない部分なんでしょうか…。

 

リアルに及ばない部分をどうフォローするか

デジタルがもっとも不得手とする部分がこの「操作感」「質感」「サイズ感」を主観的に伝えることと言えるでしょう。

現時点で「触覚」を実体験として伝達できない以上、あくまで疑似体験として伝えることが現時点での最善策になります。

つまり

動画の活用。(※上の画像は動画ではありません。実際の動画は展示会オンラインもしくはDAIWA HPにて)

ユーザーの代弁者(代理体感者?)として実際に使用している映像などを見ることができれば、エンドユーザーとして満足度は高いものになると思われます。

 

実際にDAIWAのサイト内にも動画が配置されており、商品のイメージやコンセプトが映像として伝えられています。

ただ惜しいことに、ここに配置されている動画は、展示会のために作成された動画ではなく、ブランドサイトにもリンクされている動画の流用でした。

 

せっかくテスターの方が実際に釣りをされているのに、その質感や操作感が音声として入っていないこと。実際に使った人にしか分からない生の操作感・質感を声(音声)で伝える動画であれば、ヴァーチャル展示会としての機能を存分に果たせたように思います。

 

終わりに

初めてのオンライン開催となった「釣りフェスティバル」、各企業が今後の展示会の方向性を探った会になったと思います。

展示会の目的は究極的にはエンドユーザーの購買に繋げること。リアル展示会にはそのための有力な宣伝活動としての機能が付加されていました。今回の「釣りフェスティバル」、そういった意味ではヴァーチャルな企業ブースを一同に集めた「モール」的なオンライン展示の可能性も示すことができたのではないでしょうか。

弊社も総合広告代理店としてリアルとヴァーチャルの橋渡しをしている企業、今後のヴァーチャルの進歩に必死に喰らいつき、より企業様とエンドユーザーとの交流の場を提供していけるようにしたいものです。

 

 

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